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ブックガイド『大量廃棄社会』

 

仲村和代 藤田さつき

 

「大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実」(光文社新書)

 

 

 

現代社会の経済構造(消費生活)を大量生産・大量消費・大量廃棄という視点からとらえ、それに起因するごみ問題の解決のために3R政策がとられ、粘り強い関係者の取組みがすすめられてきたが、問題は根本的な解決をみないまま、むしろより深刻になっているようだ。

 

このようななかで出版された本書は、副題にある通り、1年間に10億枚、日本で供給されている洋服の4枚に1枚が新品のまま捨てられているというアパレル業界の現場、だれもが毎日お茶碗1杯のご飯をすてているという食品ロスの発生現場となっているコンビニ業界の現実に焦点をしぼりながら、あらためて大量廃棄社会の現実を描き出している。著者は二人とも新聞記者であり、現場取材のなかで確認された事実を、多様な新聞読者に公平に伝えていくという基本的な姿勢のもとに書かれた記事によって構成されているため、新書版という形式も含めて、読みやすく、また印象深いものになっている。

 

また、そもそもの取材がNHK「クローズアップ現代」のキャスターであった国谷裕子さんとの共同企画としてはじまったということもあり、SDGs(持続可能な開発目標)のコンセプトをふまえたものになっていることも特徴であり、いまの瞬間、とても有効な情報をつたえるものとなっているといってよい。

 

SDGsの12番目の目標は「つくる責任 つかう責任」である。この視点を手掛かりに大量廃棄社会をみつめていくと、とにかくコストをおさえ売れればよいという姿勢で製品を開発し市場に送り出している生産者の責任と、使い捨てを当たり前のようにしている消費者の責任とがメダルの表裏のようなものだということに気づかされる。しかも、生産・流通・販売・廃棄・リサイクルがグローバル化している現在、生産現場の多くは発展途上国であり、低賃金の過酷な労働によってコスト構造が破壊的に変えられてきたこと、廃棄・リサイクルの現場も発展途上国にまでひろがり、有害廃棄物も含めた廃棄物が国境を越えて移動し処理されてきた現実があることも、少し注意すればわかってくることである。

 

本書には、このような現実に目を向けるための手がかりと同時に、まだまだ限られた事例ではあるが、問題の解決にむかうためのヒントも示されている。その場合、「消費」がともすれば「欲望を満たすために、財貨、サービスを費やすもの」と理解されるが、SDGsの目標をふまえたとき、消費が生産を変える糸口になる、十分クリエイティブになる力を持っているとの指摘も大事に受け止めたいものである。

 

巻末の国谷裕子さんの解説も理解を深めるうえで大変有用なものであり、一読後、この解説の私的をふまえ、もういちど読み返してみるということもあってよいと思う。

 

(2019年4月 880円+税)