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「LED調査研究」論点3

 

<論点3>LEDのリサイクルコストはどれだけかかるか、そのコストはだれが、どこで負担するのか

 

 

 

1 リサイクルコストとは

 

 一般的に、リサイクルには、収集・運搬費用+処理・処分費用(A)が必要とされます。

 

他方で、リサイクルの結果、有価物・素材の売却益(B)を得ることができるとした場合、

 

(A)<(B)であれば、ビジネスとして成り立つ可能性が高い

 

のですが、

 

 (A)>(B)であれば、ビジネスとして成り立ちにくい、

 

ことになります。したがって、この条件下で、そのリサイクル品目についてリサイクルを継続的に実施しようとすれば、(A)と(B)の差額以上のものを、どこかで、だれかがコスト負担しなければならないことになります。

 

 日本の廃棄物処理の考え方のもとでいえば、家庭から排出される廃棄物については「一般廃棄物」として市町村の責任で処理されることになり、事業所から排出される廃棄物については「産業廃棄物」として排出事業者の責任で処理しなければなりません。

 

 このような枠組みのもとでは、一般廃棄物のリサイクルコスト負担が必要となれば、第一義的には市町村が負担しなければなりません。もしも、市町村がこの負担を回避しようとすれば、住民にその負担をもとめなければならないことになります。

 

他方で、産業廃棄物のリサイクルコスト負担が必要となれば、排出事業者の負担ということになります。

 

これらのコスト負担が不十分な場合、そのリサイクルは維持できない、あるいは、不適切な廃棄物処理につながることにもなります。

 

以上の、一般的なリサイクルコストに関する論点は、LEDのリサイクルコストについてもほぼ共通しているといってよいでしょう。

 

 

 

2 LEDのリサイクルコスト

 

 LEDのリサイクルコストについて具体的に検討するとすれば、第一の論点であったLEDの回収方法との関係で、やや立ち入った議論が必要になると思われます。

 

  1. 一般廃棄物としてのLED回収の場合

 

 まず、家庭から出るLEDについては、一般廃棄物として市町村の責任で回収するのが基本になります。回収方法としては、戸別回収という方法もあるかもしれないでしょうが、回収効率を考えたとき、拠点回収の方法をとることになるのではないでしょうか。

 

 回収にあたる市町村に従来からどのようなルールがあるのかにもよりますが、この場合、回収拠点をどこにするのかということとあわせて、リサイクルコストの住民負担をどうするのかということも問題になってきます。回収業務に関わる費用に加え、業務を委託する事業者に支払う収集運搬費用や処理処分費用をすべて市町村が市町村財政で負担するのか、一部であっても住民に負担を求めるのか、という問題です。

 

 私たちの<仮の提案>としてきた「家庭からのLEDは小型家電リサイクルの枠組みをつかってはどうか」というアイデアも、これらの点を含めて市町村ごとに具体化しなければなりません。市町村によっては資源回収拠点に家電販売店などが位置づけられているような場合がありますが、その場合には協力事業者との調整も課題になります。

 

  1. 産業廃棄物としてのLED回収の場合

 

 事業所から排出されるLEDについては産業廃棄物として取り扱うのが基本になります。

 

したがって、排出事業者は、その責任において適切な再資源化ルートつながる収集・運搬事業者と契約し、排出時にはマニフェスト管理を行うことがもとめられます。当然、収集運搬、処理・処分に関わる費用負担についても取り決めがおこなわれることでしょう。

 

ただし、水銀を含む使用済み蛍光灯の適正処理と比べると、LEDには水銀が含まれていませんから、どこまで分別排出がもとめられるのかとなると、事業所からの排出量や、受け入れ事業者の処理能力に関わって決められるのではないかと思われます。

 

LEDのリサイクルという場合、大型商業施設や大学、金融機関、病院など、LEDを大量に先行導入してきた施設から、まとまった量のLEDが排出される時期が近いものと見込まれます。その受け皿の整備が急務だといわねばなりません。

 

  1. メーカーのリサイクルコスト負担について

 

 LEDのリサイクルコストについてメーカーの負担を求める議論もありうるでしょうが、日本の各種リサイクル関連法の枠組みや実態からみて、現実には、メーカーの拡大生産者責任として費用負担を求めることはなかなかハードルが高いといわねばなりません。

 

(4)「有価物」か「廃棄物」か

 

 リサイクルの現場では、「有価物」か「廃棄物」か、ということが問題になることがあります。「有価物」と考えれば、廃棄物処理法の枠組みから外れて、その処理・処分にあたることができます。それが実態にあい、弾力的な対応ができる場合もありますが、パソコン、携帯電話、家電製品などを「有価物」として引き取り、不法に「転売」するというような、グレーな「ビジネス」も存在しうることになります。

 

 このようななかで、こんごLEDのリサイクルを安定した健全な事業として成長させることを考えるならば、やはり廃棄物処理法の枠組みをふまえ、そのためのコストが必要なのであれば、コスト負担のルールを作る必要があるのではないでしょうか。