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「LEDフォーラム」主催者報告

 

「LEDフォーラム」主催者報告

 

原  強(蛍光管リサイクル協会代表理事)

 

 

 

 蛍光管リサイクル協会は、2005年に環境汚染防止の観点から水銀含有製品である蛍光灯の適正処理に取り組み始めました。2010年に一般社団法人になり、会員を募って、現在も年2回、蛍光管の回収を続けています。ただ、産廃事業者ではありませんので、回収は資格を持つ旭興産業という京都の事業者に依頼し、私どもはそのコーディネートをしています。

 

 水銀条約ができて、国内対策法も整備され、蛍光管の適正処理はそれなりに進んできたと思っているうちに、照明器具の主役はLEDに変わってきました。LEDとは、いったい何で、廃棄物になった際はどのような処理が必要なのか、ということがよくわからないまま何年間か推移していましたので、それを調べて、あるべき姿を提案できればと考えて、調査事業を始めたわけです。

 

 今回、京都市ごみ減量推進会議の助成金をいただいて、この半年余り調査研究をしてきました。

 

 調査研究の方法としては、3つの論点を立て、現場見学やヒアリングを重ねつつ検討するという方法を採りました。加えて、野村興産でLEDの手分解の実証実験をしていただきました。また、(株)浜田はすでに京浜島エコロジーセンターで手分解を事業として行なっておられますので、その実情も見学させていただきました。その結果、たどり着いた結論めいたものは3点です。

 

 

 

まず1点目として、LEDリサイクルは可能かという問いを立てました。その答えは「素材を活かす」という限りにおいては可能であるというものです。もう少し厳密に表現すれば、技術的には可能であると言わなければいけないのかなと思います。

 

リサイクルを考える場合、再生品のイメージが持てたらいいのですが、回収したLEDから新しいLEDができるということはありません。すべてを粉々にして、その中から必要な素材を取り出す作業になるということが、いろいろな調査や見学からわかってきました。

 

そういう条件の下ではありますが、実際にリサイクルをするのは簡単ではありません。リサイクルの5つの条件をクリアしないと、ひとつの社会システムとしては動かないわけです。

 

要するに、技術的にはLED灯を粉砕して素材を取り出すことは簡単にできますが、それが事業として経済的に成り立つのかが問題になるのです。したがって、リサイクルは技術的には可能であるが、事業として成り立つかどうかは微妙であるということが1点目の論点にならざるをえないのかなと思います。

 

技術の点では、まず手分解という方法があります。この方法は少量を確実に処理する場合はいいのですが、大量に出る場合は機械による破砕・選別を考えざるを得ません。どちらも技術的には可能で、すでにやっておられる事業者もありますから、いかに効率的にそこに物を集めるか、その仕組みを作れるかどうかが課題になるのかなと思います。

 

 

 

私どもは家庭から出るLEDは小型家電として回収してはどうかという仮説めいたものを持ちましたが、私は現時点でもこれでよいのではないかと思っています。

 

ただ、これには難があります。回収するとき、消費者市民がお金を添えてくれるかどうかということです。それがなければ、リサイクル業者との仲介にあたる市町村の財政負担が問題になります。回収すればするほど財政負担が大きくなる、というようなことでは持続可能なリサイクルシステムの構築は難しいのではないかという気持ちになります。

 

したがって、最終的に高価格で取引される有価物が大量に得られるのであれば、その売却益でリサイクルシステムが回りますが、家庭から出る分はそれほどないと思われますので、どうしても廃棄物処理ということにならざるをえず、そのリサイクルコストを誰が負担するのかという議論にならざるをえないということになります。

 

この点で、日本ではメーカーに拡大生産者責任を求めるということで、LEDの場合もメーカーが、リサイクルコストをあらかじめ商品代金に組み込み、集まったコスト分を適正処理に使うということが考えられればいいのですが、残念ながら、いまの日本社会ではそれは口では言えても現実性のない話だと思われます。

 

ですから、社会的にメーカー責任を問うという方向で議論が進めば話もまた変わってくると思いますが、どうもそこは難しそうです。そうなると、市町村の負担でやるか、もしくは末端の消費者が処理費用を添えて市町村に委託せざるを得ないことになります。

 

昨年の環境フェスティバルでアンケートを採ったところ、妥当な処理費用として500円くらいと答えた人がけっこう多かったので、家庭から出るLEDや小型家電については「500円を添えて出してください」という議論ができるかどうかが問題です。もしできないとなると、市町村が負担をして処理しなければならない。このあたりを考えたときに、なかなか難しい問題が待っているという感じを持つわけです。

 

短期的な問題では、いま家庭から出るLEDはLED電球です。白熱灯や蛍光球からLED球へと変えたものが、ごみとなって出始めていて、それはどうしたらいいのかという質問がけっこう寄せられます。環境に関心のある人ほど、「ごみとして捨てることは耐え難い。どこへ持っていけばいいのか、教えてください」となるわけです。

 

ただ、調査やヒアリングの過程では、「LED球はそれほど価値がなく、一般ごみとして処分するのが手っ取り早い。水銀も入っていないので、それで問題ないでしょう」という方向で、なんとなく落ち着いてきています。これを皆さんがどう思われるかということが、短期的な問題となっています。

 

いずれにしても、家庭の分はこれから取り換えが進み、耐久期間はおおむね4万時間とされていますから、家庭でLED器具を使えば、その排出は15年から20年先になります。それがバラバラと出てくるわけで、それを効率的にリサイクルするのは非常に難しい。よって、小型家電という枠の中で回収するということを、大変ですが時間をかけてやっていくことを提案したいと考えています。

 

 

 

事業所から出る分は、短期間のうちに社会的システムを整えないといけない事情にあると思います。つまり、産業廃棄物として排出される直管の蛍光管の代わりに取り付けたLEDが、ごみになって出てくる日が近い。すでに東日本大震災の前後に取り付けられて、とくに震災後の節電中にLEDに置き換えた商業施設や金融機関などから、ごみになって、まとまって出始めています。

 

コンビニもLEDを使ってきましたが、店じまいのピッチが速いので、店じまい時に使用可能なLEDを見つけて再使用することにはなりにくいのです。店ごとにオーナーがおられて、オーナーは閉店した店のLEDを再利用するよりも新品をそろえることが多いので、店によっては3年から4年で廃棄物になることもあります。そういうものが、すでにリサイクル事業者のところに出始めていて、それがどのように処理されているかを調査した結果がポイントになります。

 

それは、小型家電の認定事業者でも、その他のスクラップ業者でも、やれないことはありません。LEDの破砕について、特殊な要件や特殊な資格・免許があるのか等はよくわかりませんが、簡単にやれそうなことです。それぞれの事業者の特性で、大型のスクラップを主にしている事業者、小型家電を主にしている事業者など、事情は違いますが、その気になればやれるので、すでにまとまった分量を受けて製錬業に売却した事例も見聞きしてきました。

 

このように産廃として排出されるLEDを、法的にどのように位置付けるのか、取扱事業者の資格・要件はどうするのかということも、持続可能性を持ったシステムとして考える以上、考えておかなければいけないと思います。産廃として出てくる分を、どのように集めて、どこで誰が処理するのか、その仕組みづくりを大いに急ぐ必要があると思っています。

 

そこで後ほど、野村興産と(株)浜田の方から実際の取り組みを報告していただきますが、野村興産はこれまで水銀の回収処理の専門業者としてやってこられました。そこにLEDが入ってきたら、どういうことが起きるのか。大型スクラップを主としてやっている場合、主業務をやりながらLEDも扱っていきますが、野村興産は蛍光管の回収実績があるので、LEDも蛍光管と一緒に集めるという方式がうまくいくなら可能になるだろうと思います。

 

しかし、排出する事業者の側が「高い料金は払えないので別の業者に依頼する」となれば、そういう道も考えざるを得ませんので、産廃として集めるものをどこでどのように処理するかは、皆さんのご意見も含めて考えなければいけないし、最終的には排出事業者が個別に決めることだろうと思います。

 

それから、これまでは資源となる有価物として回収してきたというような場合、有価物の引き取りですから、排出事業者から代金を徴収せず、むしろ代金を払って回収してきたわけです。今後、そういう方式が継続できるのかどうか。長い道のりですから、持続可能な取引形態を考えなければなりません。

 

そのように考えてみますと、LEDも廃棄物処理法のもとで産廃として位置付けて、排出者は料金を負担して、そういうなかで処理システムが回っていくのではないかと考えてみました。

 

その場合、どのくらいの費用ならいいのか。従来の水銀を含む蛍光灯を処理する料金とLEDの処理料金は、同じなのか、違うのか。これも、各事業所の事業として採算をとるために必要なコストは言わざるを得ません。このような市場のコスト競争の中である程度の価格帯が決まった場合、処理業者の側で「参入しない」とか「撤退する」といった選別が始まるかもしれないとも考えてみました。 

 

 

 

以上、3つの論点について、この間の調査研究のなかで答えを見つけてきました。皆さんはどのようにお考えになるでしょうか。この後の事例報告も聞いていただいたうえで、ご意見を伺えればありがたいと思います。