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ブックガイド 山本良一『気候危機』

 

「地球温暖化」や「気候変動」に代わる用語として「気候危機」という用語が出現し、このところ定着しつつある。英語の表現としても、Global WarmingClimate Changeに対してGlobal HeatingClimate Crisisという表現がひろがっているという。昨今の異常気象や自然災害の現実からすればまったく違和感はない。

 

 本書は、このようななかで、2018年8月からの一年を、「革命」と呼ぶに値するとして、グレタ・トウンベリが始めた気候ストライキの広がり、これに呼応する自治体レベルの動きや国家レベルの動きを紹介している。

 

気候危機の深まりの中で「パリ協定」が採択された。「協定」は世界の気温上昇を2℃未満、できれば1・5℃未満に抑制することをもとめているが、2018年10月にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は「1・5℃特別報告書」を公表したのを機に、この間、1・5℃未満の目標を達成するためのよびかけや行動が急速に広がっているのである。この動きに火をつけ、勢いをつけたのが、グレタがたった一人ではじめた気候ストライキだったというのである。

 

著者は、第1章、第2章で「革命前夜」のようすをえがきだす。第1章では、温暖化の科学がさまざまな知見を積み上げ、「1・5℃未満」を目標にすることの正当性がたかまってきたことを紹介している。第2章では、熱波、巨大ハリケーン、豪雨などの極端な気象が頻発していることについて、それらが気候変動に起因するものだということを論じている。そして、このままで推移すればとりかえしのつかない事態に立ち至るというのである。まさに気候の非常事態に直面するなかで、「革命」がはじまったというわけである。

 

第3章「革命勃発」では、グレタの気候ストライキの決行、それに呼応する若者の行動のようすが紹介される。行動は瞬く間に広がり、グレタのストライキが金曜日であったことから「未来のための金曜日」の運動として、若者を中心にした世界的な規模でのいっせい行動がかつてない規模で実施されたのである。日本での取組みはまだ十分ではないにせよ、東京、大阪、京都など、各地で若者を主体としたデモが実施された。また、このような若者の行動に対して、世界中の、多くの科学者から支持が表明された。

 

第4章では、若者の行動に突き動かされたように、多くの自治体が「気候非常事態宣言」を行い、早ければ2030年、遅くとも2050年までにカーボンニュートラルを達成するための取組みを開始していることを紹介している。 

 

 現在進行する気候危機は、現代の文明の持続不可能性を示すものである。気候危機に関する科学的知見にはなお不確実さがあるかもしれないが、すべての問題が明らかになるのを待つだけの時間は残されていないというべきである。グレタの「私たちは歴史的な転換転にいます。私たちの文明そして地球の生物圏全体を脅かす気候変動危機を少しでも理解している人は、それがどんなに気まずくそして経済的な不利益を伴うことだとしても、はっきりと明快にメッセージを伝えなければなりません。私たちは、現代社会のあらゆる側面を変えなければいけません」との訴えに学び、未来の世代のために、新しい経済・社会システムへの変革を躊躇することなくすすめるべきであろう。

 

(岩波ブックレット 2020年1月 620円+税)