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「オンライン社会」が来る!?

 

「オンライン社会」が来る!?

 

新型コロナウイルス対策のなかでマスク、手洗いとともに、人に会わないということが強調されています。「ソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)」という聞きなれない用語も出回っています。「オンライン」対策も、そのための手段として強調されています。

 

ゴールデンウイークも「ステイホーム」で「オンライン帰省」といったことがいわれましたが、3月後半くらいから「テレワーク」「在宅作業」ということが多くの企業(組織)でみられるようになりました。ZOOM会議システムを使った「オンライン会議」や「オンラインセミナー」もあたりまえになっています。今年の定期総会は「オンライン総会」で、という事例も目立ちます。大学では「緊急事態宣言」のなか「オンライン授業形式」で開講。このままいくと春学期では教員と受講学生がいちども顔をあわせないまま期末レポートで単位認定、ということになってしまいそうです。

 

このなかで、ふと思い出したのが、アルビン・トフラーが『第三の波』で近未来図のひとつとしてのべた「エレクトロニクス住宅」のイメージです。この本の原著が出たのが1980年のことで、アメリカでは情報通信産業が急成長しはじめた時期です。「新しい生産方式が進展する過程の裏に、実は息を呑む社会変化の可能性がひそんでいる」「やがて何百万もの人たちが、オフィスや工場へ通勤せず、家庭で過ごす」「遠距離通信装置などが正しく配置されれば、生産部門においても、ますます多くの仕事が、どこでも、たとえば家庭の居間でも、出来るようになる。これは単なる空想物語ではない」というのです。そして「通勤」が「通信」に代わり、「家庭内産業」が形成される、そのとき家族の姿が変わり始める、というのです。また、「生産=消費者(プロシューマー)」のイメージも近未来図のなかで示されています。

 

トフラーの主張は、中公文庫の『第三の波』の「訳者あとがき」で「遊牧の民が定着し農耕を営むようになった時期が「第一の波」。産業革命によって市場交換を前提とした社会の成立したのが「第二の波」。そしていま、トフラーは、世界が「第三の波」の社会へ進みつつあると説く。それに伴って政治、経済、社会、文化、人間の思考形態などがどう変化するのか、われわれ人類は新事態に備えてどう身構えるべきか」と要約されています。

 

新型コロナウイルス対策のなかで、思いがけなくも、このような「エレクトニクス住宅」のイメージが現実化してきたようなのですが、この流れは、「コロナ後」の社会でも「オンライン社会」として継続するのでしょうか。トフラーの時代からすれば、情報通信技術は革命的に進歩しています。それは時代を変えるだけの力をもっているのかもしれません。

 

人と人をつなぐ情報通信技術が、人と人を隔てるための技術として使用されるも何か変だなと感じながら、いまは「離れていてもつながっている」と思うよりないのかとも思っています。

 

とはいえ、「オンライン会議」のあとに「オンライン飲み会、どう?」といわれるのも、何か落ち着きませんね。