· 

「コロナ・ショック」後への展望

 

「コロナ・ショック」後への展望

 

新型コロナウイルスの感染は、緊急事態を抜け出したというものの、移動制限緩和にともない、人、モノの動きが活発化するなかで、いつ第二波、第三波がやってくるかもしれない。有効な治療方法やワクチンが開発されるまで、決して油断はできない。

 

また、「自然災害シーズン」を前に、集中豪雨や台風などにともなう災害が発生した場合の感染予防対策も事前に考えておかなければならないことである。

 

他方では、この間、突然の「補償なき休業要請」によってダメージをうけた飲食、宿泊、観光、文化、教育をはじめ多くの産業で、中小事業の経営危機が現実化しはじめている。給与が保障されないまま「休業」にはいり、そのまま失職したアルバイトや派遣労働者などの生活危機も深刻化している。各種の経済統計は、今回の「コロナ・ショック」が「リ-マン・ショック」のレベルにとどまらず、新型コロナウイルスのパンデミックが「スペインかぜ」以来、百年に一度のことであるのと同じく、まさに百年に一度の「大恐慌」に匹敵する深刻なもので、簡単に「V字型回復」できるようなものではないことを示している。

 

このようななかで、緊急の生活支援策、経済対策の具体化をもとめる議論とともに、「コロナ・ショック」後のビジョンをめぐる議論も目立ちはじめた。

 

例えば、この間、多くの企業・組織で「テレワーク」「オンライン会議」ということが取り入れられたが、この経験はそのまま定着・普及するのではないか、また、職場に毎日行かなくてもよいのなら、居住地そのものを都心から離れたところに移してはどうか、といった議論が結構目立つようになった。このような議論の延長線上にある情報通信技術(IT)を活かした社会経済ビジョンを展望するという流れは確実に勢いを増すことであろう。

 

京都循環経済研究所の立場から注目しなければならないのが、経済回復と環境(気候変動)対策を結合して考えようとする「グリーン・ニューディール」政策である。これは、いうまでもなく「大恐慌」のあとにとられた「ニューディール」政策に因んだ言い方であるが、意図しているのは「脱炭素型の産業構造への転換」を求めるもので、今日的には2050年にむかってCO2排出量を実質ゼロにしようという政策的な取組みである。「リーマン・ショック」のもとで、アメリカのオバマ政権のもとでも構想されたこともあるが、現在、「パリ協定」と連動し、アメリカ、ヨーロッパなどで、再生可能エネルギーを活用した「環境+経済」ビジョンとして動きがはじまっている。

 

もうひとつ、環境省が示している「地域循環共生圏」というアイデアにも注目したい。今回公表された「環境白書」でも「世界共通の目標であるSDGsを地域で実践するためのビジョン」として示され、「地域ニーズを踏まえ、地域資源を活用したビジネスをイノベーションやパートナーシップにより創造」することをめざすものである。

 

「コロナ・ショック」から立ち直り、あらたなくらし、地域、社会、経済をめざそうというとき、これらのビジョンを手がかりに議論していくこともよいのではないか。