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「世界食糧計画」にノーベル平和賞

 

「世界食糧計画」にノーベル平和賞

 

  「食糧問題」を考える機会に

 

 2020年のノーベル平和賞は「世界食糧計画」(WFP:本部・ローマ)に授与されることになりました。紛争や自然災害に加え、新型コロナ感染拡大のなか、飢餓に苦しむ地域や人々に食糧支援を継続していることが評価されたものです。国連WFP協会年次報告書によると約9710万人(88カ国・地域)に約420万トンの食糧支援が行われたとのことです。

 

 食糧問題の構造を考えるとき、重要なことは、増え続ける世界の人口に見合う食糧が確保できるかどうかということとともに、さまざまな事情で公平に食糧が分配されないという問題があるということを認識しておく必要があります。とりわけ、戦争や武力紛争が飢餓や食糧不安を招いている現実をみつめる必要があります。地域の安定、平和が実現しない限り、食糧問題は解決できないのです。このような点から、WFPが果たしている役割はとても大きいというわけです。

 

気候変動など、食糧問題を困難にする条件はますます増えるものと思われます。このようななかで、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のひとつである「飢餓の撲滅」のために国際的な連携・協調を強めることが求められます。この点での日本の役割発揮を期待したいものです。

 

 他方で、日本の現実を見ると、「食料自給率」は後退し続け、いまや38%水準(令和元年・カロリーベース)です。「食料自給率」向上が強調されていますが、有効な対策が見込めないままです。

 

 また、食品ロス削減のキャンペーンのなかで、日本で発生している食品ロス量は約612万トン(平成29年度推計)であり、WFPの国際食糧支援の量を大きく上回っている、との指摘も繰り返し行われています。

 

 WFPにノーベル平和賞が授与されるという機会に、足元をみつめ、食糧問題についてもう一度考えあう必要があるのではないでしょうか。