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環境政策の課題(2)脱炭素社会のエネルギー政策

 

環境政策の課題(2)脱炭素社会のエネルギー政策

 

 

 

前回は気候変動対策について取り上げました。「気候危機」と言われる状況のもと、あらゆる政策を脱炭素社会にむかって動員しなければならない状況なのですが、なかでも、脱炭素社会にふさわしいエネルギー政策を確立することはCO2削減に直結するという意味からも格別に重要な政策分野だといわねばなりません。

 

 

 

「省エネ」の徹底、エネルギー効率改善

 

脱炭素社会へのエネルギー政策について考えるとき、日本は「技術先進国」だと評価されてきた「省エネ」の徹底、さらにエネルギー効率改善の課題はひきつづき重要です。

 

2000年代に京都議定書の目標達成のために省エネのとりくみが大きく前進しました。家庭でも、事業所でも、エネルギーの消費実態を「見える化」する取り組みが進みました。省エネ診断の取り組みもさまざまに進められました。また、それに合わせて、テレビ、冷蔵庫、エアコンなどについて省エネタイプへの買い替え時にポイントが与えられるなどの買い替え促進キャンペーンも進められました。消費者・市民としても家電製品の省エネ度が一目でわかる省エネラベルの開発もおこなわれました。照明器具についても、白熱電球から蛍光灯へ、さらにLEDへと転換が進みました。このような省エネの取組みは、エネルギー需要抑制のために、あらためて強調されてよい局面だといえるでしょう。

 

 

 

脱炭素化に直結する取り組み

 

しかし、現在、求められるのはよりすすんで、脱炭素化に直結する取り組みです。

 

最近、自動車の脱炭素化の動きについてのニュースが流れています。

 

ガソリン自動車から電気自動車への転換が急速にすすむ見込みです。自動車業界では、この動きに乗り遅れないように新しいタイプの自動車の開発競争が進められています。

 

同時に、電気自動車が主流になるとしても、そのとき、どんな電気で走るのかという問題も課題になります。

 

日本が世界の流れからみて立ち遅れているとされる脱石炭の取り組みも、国内外の石炭火力発電所からの撤退を明確にするなど、一歩も二歩もすすめなければなりません。

 

住宅・建設業界では、これから建築する建物はエネルギー管理を行ない、省エネと再生可能エネルギー利用で「エネルギーゼロ」タイプのものにかわっていくことでしょう。

 

国際的には再生可能エネルギー100にむかう動きが進んでいますが、日本でも再生可能エネルギーの積極活用が課題になってきます。

 

 

 

再生可能エネルギー

 

再生可能エネルギーと言えば、太陽光、太陽熱、風力、波力、バイオマス、小水力、地熱など、さまざまなものがあげられます。

 

この間、力を入れてきたのが太陽光でした。固定価格買取り制度のもとで、住宅などの上に太陽光パネルを置く取り組みが広がりました。また、共同出資の太陽光発電所なども作られてきました。このような取組みがさらに広がるための支援制度もより実効性高いものにしていく必要があるでしょう。

 

最近のニュースですが、「洋上風力産業ビジョン」が公表されました。京都新聞12月16日朝刊によれば、経済産業省と国土交通省のもとにある洋上風力発電官民協議会でとりまとめたもので、2040年の発電能力を最大4500万キロワットにするというのです。再生可能エネルギーの柱として原発45基相当の規模になるとすれば、EU、中国に次いで世界3位に相当するとのことです。また、発電コストも火力発電を下回ることがみこまれるとしています。

 

再生可能エネルギーといえば太陽光発電とされることが多く、これまでは風力発電についてはこれだけ重視されていませんでしたが、脱炭素社会を実現するうえで重要な戦略目標になったわけです。政府がこのようなビジョンを示したことにより、技術、人材、資金が動き始めることが予想されます。環境戦略が産業をリードするということがいえるわけです。

 

 

 

人材・技術・資金の流れを

 

再生可能エネルギーを地域で作り出し、地域で消費する、そのことで外部に流失していた資金を地域で循環させるというアイデアも各地で現実のものになり始めています。再生可能エネルギーの普及をめざす市民団体や関連自治体の協働のなかでいくつかのモデルが生まれています。まだまだ試行的なものが多いのですが、国の環境戦略が後押しをする可能性があることでしょう。環境省はこのような取組みを「地域循環共生圏」として推奨しています。

 

いずれにせよ、脱炭素社会に向かうためのエネルギー政策がもとめられるなかで、さまざまな動きがはじまっています。この動きを大きなながれにしていくためには、政府が環境・エネルギー戦略を明確にし、人材・技術・資金を積極的に投入していくことが必要です。

 

 

 

「エネルギー基本計画」の見直し

 

そのために、脱石炭、脱原発、再生可能エネルギーの積極活用をめざして、国のエネルギー政策の基本となる「エネルギー基本計画」そのものの見直しを行う必要があるでしょう。

 

「エネルギー基本計画」をめぐっては、現在、見直しの時期にあり、関連する審議会での議論が始まっています。議論の中では、現在の計画で、2030年度の電源構成について再生可能エネルギーは22%から24%、原子力は20%から22%、火力を56%程度、を目指すとしている電源構成のあり方や、今後の原発のあり方などが焦点になるものと思われます。脱炭素社会に向かうためのエネルギー政策の基本を問う議論ですから、注目していきたいと思っています。