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環境政策の課題(4)循環型社会形成

環境政策の課題(4)循環型社会形成

循環型社会形成推進基本法

ごみ問題の経験の中から、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から脱却し、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない「循環型社会」を形成することが急務となっているとの認識が示され、そのための基本的な枠組みを示す循環型社会形成推進基本法が作られていきました。

循環型社会形成推進基本法によれば、「循環型社会」とは、製品等が廃棄物等となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会をいうとされています。ここにあるように、この法律では、廃棄物等の処理にあたっては、「発生抑制」「再使用」「再生利用」「熱回収」「適正処分」という優先順位をさだめているのです。これが「3R」の目標の根拠となり、国、自治体、事業者、消費者・市民がそれぞれの役割を担っていこうということになったわけです。

循環型社会形成推進計画

この法律にもとづき、具体的な取組みを推進するために、循環型社会形成推進計画が作られることになりました。第一次「基本計画」は2003年に作成され、それ以後、5年ごとに取り組みの内容、進捗状況を評価し、新しい「基本計画」が作られてきたのです。その最も新しいものが2018年に作成された第4次「基本計画」です。この一連の流れを見ることによって日本の循環型社会形成の取り組みのあらましをつかむことができます。

第4次「基本計画」では、重要な方向性として

1 地域循環共生圏形成による地域活性化、

2 ライフサイクル全体での徹底的な資源循環、

3 適正処理の更なる推進と環境再生

などをあげています。また、具体的な課題として災害廃棄物対策やプラスチック問題などに言及しています。

地方自治体もこの枠組みの中でそれぞれ法にもとづく「循環型社会推進基本計画」を作成し、取り組みを進めています。

食品ロス

「食品ロス」については、10月が「食品ロス削減月間」ということで、政府関係、自治体関係の啓発情報がたくさん出ています。また、中村和代・藤田さつき「大量消費社会」(光文社新書)では、コンビニでの食品ロスの実態が、アパレル産業での実態とともにレポートされています。

実際には、コンビニの食品ロスの問題は、この問題が社会問題化するなかで改善がみられるようになったといえます。また、そもそもコンビニという業態のあり方がいろいろな角度から見直されていることも現実です。

それから、今年のノーベル平和賞に「国連世界食糧計画」(WFP)が選ばれましたが、これは、世界各地で飢餓に苦しむひとが多いなかで、国際的な食料支援をしてきたことが評価されたものです。世界の9人に1人が十分な食料が得られないという中で、まだ食べられるものを廃棄してしまうという「食品ロス」の問題は、お互いの努力で解決していきたい問題だと思います。

とにかく日本は、国連WFPの国際食料支援の量より多くの食品ロスを出しているというのですから、何とかしなければなりません。

 「食品ロス」の問題について考える新刊を紹介します。井出留美著『食料危機』(PHP新書)です。「食料危機の現状」「食糧危機の原因」をふまえ、「食料を確保するためには」として「食品ロス削減」や「食のシェア」「生ごみの資源化」などのホットな話題に言及しています。

プラスチック問題

プラスチック問題については、2020年7月からレジ袋の有料化が義務付けられたことで、従来は無料配布であった、多くの業種で、レジ袋の有料化が実施されました。半年ほど経過して、これから問題点を整理する時期になってきます。

この問題では京都府亀岡市の動きも注目しなければなりません。有料か、無料かということではなく、そもそもプラスチックのレジ袋は配布してはいけないというのです。条例に基づき、2021年1月からこの取組みがスタートします。

 プラスチック問題はレジ袋問題だけではありません。これから問題になるのは容器包装リサイクル法のもとでプラスチック容器包装材の分別回収がすすめられてきましたが、プラスチック製品廃棄物などもふくめた総合的なプラスチックの回収戦略が検討されており、モデル事業もおこなわれています。このような動きがすすめば、プラスチックのリサイクルの方法として「サーマル・リサイクル」(熱回収)についての評価・検討も課題になってくるでしょう。

 いずれにしても、これらの議論をすすめていくと、そもそもプラスチックのない暮らしを作り出すことが重要だということになってきますが、それでは「脱プラスチック」への道、どうすれば方向が見えてくるでしょうか。

有害危険ごみ

「有害危険ごみ」に関わっては、水銀が使用された製品である蛍光管、乾電池、水銀体温計、水銀血圧計などについて注目していただく必要があります。これらについては「水銀に関する水俣条約」の国内対策としてさまざまな取組みが進められたところです。

 このなかの電池に関わっては、この間、蛍光管リサイクル協会が「あらためて電池について考える」調査研究に取り組んでいます。このなかで、電池の問題として水銀対策とともに資源利用の課題を考える必要があることが指摘されています。また、大きな研究テーマとしてリチウムイオン電池由来の発火事故という問題が浮かび上がっています。

災害廃棄物

 

災害廃棄物対策については、この間のあいつぐ自然災害のなかで、その重要性が浮き彫りになっています。みなさんのお住まいの地域・自治体では、この問題についての検討がされているでしょうか。問題の性格上、ひとつの自治体だけで解決することは困難であり、広域連携課題として考えていくことが必要なのではないでしょうか。