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SDGsを考える(3)

SDGを考える(3) エシカル消費とSDGs

(「グリーンコンシューマー」をめざす)

80年代後半から90年代にかけて地球環境問題がクローズアップされるなかで、「地球をまもるために私にできることは何だろう」ということから、ごみ・リサイクル問題などにとりくむ消費者・市民が広がりました。このなかで、「グリーンコンシューマー」をめざす消費者・市民の活動が日本の社会の中で力を持ち始めるのです。

「グリーンコンシューマー」とは、「環境に配慮した行動ができる消費者」のことです。とくに「買い物」にあたり、環境のことを意識し、環境にやさしい商品を意識的に選択購入できる消費者のことをいいます。このような消費者が増えることにより市場のグリーン化が促進される、お買い物が社会を変えるという運動理念が形成され、強い影響力を持つに至りました。このような活動のなかで、以下のような「グリーンコンシューマーの10原則」が強調されました。

 1 必要なものだけ買う

 2 ごみを買わない。容器は再利用できるものを選ぶ

 3 使い捨て商品は避け、長く使えるものを選ぶ

 4 使う段階で環境への影響が少ないものを選ぶ

 5 つくるときに環境を汚さず、つくる人の健康をそこなわないものを選ぶ

 6 自分や家族の健康や安全をそこなわないものを選ぶ

 7 使ったあと、リサイクルできるものを選ぶ

 8 再生品を選ぶ

 9 生産・流通・使用・廃棄の各段階で資源やエネルギーを浪費しないものを選ぶ

10 環境対策に積極的なお店やメーカーを選ぶ

 企業の環境対応として「グリーン購入」の取組みが進められましたが、このような企業の取組みと、消費者・市民の「グリーンコンシューマー」をめざす動きが連動するなかで、市場のグリーン化の課題が環境問題解決のための課題として浮かびあがったのです。

(「グリーンな消費」から「エシカル消費」へ)

 企業の環境対応が、「環境」のみならず、さまざまな社会的課題に対応することがもとめられるなかで、CSR活動へと展開していったのと同じように、消費者・市民の立場から解決しなければならないさまざまな社会的課題について考え、行動することの重要さが強調されるようになるなかで、「グリーンな消費」から「エシカル消費」へと活動理念の広がりがみられるようになりました。

「エシカル消費」とは、「地域や社会、環境や人々に配慮して、モノやサービスを買うこと」をいうのですが、それは、毎日のお買いものが世界を変えるための一票になるのだと強調されました。しかし、「エシカル消費」については、企業のCSR活動と同じように、何を、どのようにとりあげればよいのか、明確な判断基準がないともいわれました。

このようななかで、2015年に国連がSDGs(持続可能な開発目標)を決定したことにより、それにしたがって議論されることが目立ってきたようです。

とくに、SDGsには、12番目の目標に「つくる責任、つかう責任」という目標があります(別掲資料参照)。「エシカル消費」という場合、この目標に依拠し、商品やサービスを作り、提供する側の事業者責任と、それを使用し、消費する側の消費者・市民とを連動させながら、よりよい社会をつくりあげていこうというわけです。

消費者がライフスタイルを変え、環境をまもるだけでなく、よりよい社会・経済をつくりあげることをめざして、商品・サービスの選択によって意思表示を行うことに大きな可能性を見出すことができるのではないでしょうか。

現在、この「つくる責任 つかう責任」との関係で具体的な行動が呼びかけられているものとして「食品ロス削減」と「プラスチック削減」の取組みがあります。SDGsとして具体的な年度目標をかかげていることもふくめ行動計画が具体化され、確実に取組みをすすめることが期待されています。

<資料> 目標12 持続可能な生産消費形態を確保する(つくる責任 つかう責任)

12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YEP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。

12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。

12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人あたりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。

12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の待機、水、土壌への放出を大幅に削減する。

12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。

12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。

12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。

12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。

12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。

12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率的な補助金を合理化する。           

(「持続可能な開発のための2030アジェンダ」外務省仮訳から)