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情報ガイド IPCC

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、環境と開発に関する世界委員会が報告書(1987)をまとめ、Sustainable Development概念を提唱し、また、気候変動対策が国際的な課題としてうかびあがるなかで設立されました。IPCCは世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立されたもので、各国政府から推薦された科学者があつまり、気候変動に関する科学的・技術的・社会経済的な評価を行い、得られた知見を政策決定者をはじめ、広く一般に利用してもらうことを役割としています。

IPCCは、この間、第1次報告書(1990)以来、5回にわたり報告書を公表しています。それぞれが気候変動に関する重要な政策決定につながってきたものです。

最新の報告書である第5次報告書(2014)では、

・人の排出する温室効果ガスが、地球温暖化の主因である可能性が極めて高い

・長期にわたり気候が変化し、社会と生態系に厳しく、取り戻せない悪影響が及ぶ可能性が増す

・21世紀末の平均気温は20世紀末より最大4.8℃高く、海面上昇は20㎝上昇する

・熱波や干ばつ、洪水の頻度が増し、食糧や水の不足、貧困、紛争を招く恐れがある

・現世代が努力しないと、「重荷を背負わされる」のは将来世代だ

などとのべていました。

このあとさらに、気候変動による影響をおさえるために、気温上昇を1.5℃でとめなければならないということに焦点をあてて、「1.5℃特別レポート」(2018)を公表しました。さらに、2019年8月の「土地関係特別報告書」や2019年9月の「海洋氷雪圏特別報告書」などを発表しています。

2019年5月には第49回総会を国立京都国際会館で開催し、パリ協定の実施に不可欠な各国の温室効果ガス排出量の算定方法に関する「2019年方法論報告書」(いわゆる「IPCC京都ガイドライン」)を採択しています。

このような各種の報告書を受けて、この間、第6次報告書が準備されていたものです。

今回公表されたのは第1作業部会報告です。こんご、第2作業部会報告(影響・適応・脆弱性)、第3作業部会(気候変動の緩和)が順次公表され、最終的に2022年秋に統合報告書としてまとめられるとのことです。

これらの報告書は、気候変動対策について検討を重ねてきた気候変動枠組条約締約国会議(COP)の議論の基礎になる科学的知見となってきたものです。今回の第1作業部会報告は、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」とし、「向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21 世紀中に、地球温暖化は 1.5及び 2を超える」としています。

もはや「まったなし」の状況のもとで、COP26がこの秋、開催されます。

このようななかで、「2050年カーボンニュートラル」を目標として宣言した日本の気候変動対策についても、さらに踏み込んで具体化をすることが求められています。

 

とくに「エネルギー基本計画」をめぐる議論のなかで明らかになったように、「脱石炭」「脱原発」について政治決断し、「省エネ・効率改善の徹底」を前提に「再生可能エネルギーの主力電源化」を実現するための取組みを本格化することが求められているといわねばなりません。