· 

蛍光管リサイクル協会のあゆみ

蛍光管リサイクル協会のあゆみ

1 一般社団法人設立まで

 蛍光管には微量ながら水銀が使用されています、したがって廃棄物として排出する際には他の廃棄物とは分別し、適正処理することが必要です。また、ガラスやアルミは資源として活かすことができます。

このようなことから、NPO法人として活動を開始したコンシューマーズ京都では、蛍光管の適正処理のシステムをつくりあげるために活動を続けてきました。

 2005年、コンシューマーズ京都が提案した「家電販売店と協働して蛍光管の適正処理システムづくりをめざす」というプログラムが環境省の「エコ・コミュニティ事業」として採択されました。この「エコ・コミュニティ事業」では、札幌市や北九州市などの事例に学んで、家庭から出る蛍光管を「まちの電気屋さん」を拠点に回収することが可能かという社会実験をしようとしたものでした。

取組みの結果、蛍光管の分別回収の方法として「まちの電気屋さん」を拠点とする回収方式の可能性を確認することができたと評価し、その実現をよびかけました。

この取組みをうけるような形で、2006年10月、京都市では蛍光管の分別回収が始まりました。区役所や京都市のごみ関連施設とともに協力いただく電気店が回収拠点と位置付けられ、蛍光管の適正処理を求める市民向けの啓発がすすめられました。

他方では、事業所から排出される蛍光管は、大手の企業などでは環境マネジメントシステムの一環として蛍光管の分別排出が行われていましたが、中小企業などでは明確な分別排出が行われていないという実態がありました。

事業所から排出される蛍光管の量は、家庭から排出される量に比べてとても多く、蛍光管の適正処理をめざすならば、事業所から排出される蛍光管の分別排出を求めていくことが課題として認識されたのです。

このようなことから、コンシューマーズ京都は、京都ビルヂング協会の会員事業所の協力を得て蛍光管の共同排出・回収の実験を行うことになりました。この社会実験は、全労済や京都市ごみ減量推進会議等の助成対象になり、事業の成果を社会的に共有する形で行うことができたことをふくめ貴重な経験になったといえます。

 

2 一般社団法人の設立

このような経験のうえに、2010年4月、蛍光管リサイクル協会の設立準備会合がよびかけられました。準備会合が重ねられ、設立する組織の概要が固められていきました。

確認されたことは

・法人の形態としては一般社団法人とすること

・事業内容は、教育啓発、調査研究とあわせて蛍光管の共同排出・回収システムづくりをすすめること

・会員には正会員とともに、利用会員、賛助会員もみとめること

・事務局はコンシューマーズ京都におくこと

などでした。また、これらの確認内容をもりこんだ定款、役員候補者も確認されました。

 このような準備活動を経て、2010年10月1日、一般社団法人蛍光管リサイクル協会は設立され、公証人役場で定款の認証をうけ、ただちに京都地方法務局に設立登記を行い、法人としての活動を開始することになったのです。

定款には、「目的」として「蛍光管の適正処理・再資源化のシステムづくりをすすめる」ことが記され、その事業内容としては、その目的に資するため、次の事業を行うことにしています。

(1)蛍光管の適正処理・再資源化に関わる情報提供・教育啓発

(2)蛍光管の適正処理・再資源化に関わる調査研究と提言

(3)オフィスビル等から出される蛍光管の回収業務の連絡調整

(4)家庭から排出される蛍光管の地域回収の連絡調整

(5)前各号に掲げる事業に付帯又は関連する事業 

これを機に、蛍光管リサイクル協会の活動がはじまり、ご協力いただく事業所・オフィス等から排出される蛍光管の共同排出・回収の事業がはじまったのです。

 

3 「水銀に関する水俣条約」の採択と国内対策の具体化

 蛍光管リサイクル協会の活動がはじまるのを前後して、国連環境計画(UNEP)のもとで国際的な水銀規制の動きが具体化しました。

このような動きに対して、コンシューマーズ京都は、蛍光管の適正処理を求めてきた経過をふまえ、2013年10月に「水銀に関する水俣条約」が採択され、それにともなう国内対策の準備にいたる一連の経過のなかで、「蛍光管フォーラム」「水銀条約セミナー」の開催などを通じて情報提供、意見交換の場を持つとともにくりかえし提言を行いました。

そして、蛍光管の適正処理のルールづくりへ京都からの発信力を大きくするために、京都市会をはじめとする京都府内自治体での「意見書」採択を求める活動に取組みました。

蛍光管リサイクル協会は、これらの活動に共同で取組みをすすめました。

 京都市会は2014年3月17日、次のような「意見書」を全会一致で採択しました。

 

「水銀に関する水俣条約」の早期発効と

水銀含有廃棄物の国内適正処理体制の確立を求める意見書

 

昨年10月10日、水銀及び水銀化合物の人為的な排出から、人の健康及び環境を保護することを目的にした「水銀に関する水俣条約」が、約140箇国の賛同を得て採択された。我が国は、水俣病と同様の健康被害や環境破壊を繰り返してはならないとの決意と、こうした問題に直面している国々の関係者が対策に取り組む意思を世界で共有していくという立場から、本条約を水俣条約と名付けることを提案し、全会一致で各国の賛同を得たものであり、今後、国際社会との緊密な連携と、国内における水銀対策の更なる強化が求められる。

京都市においては、市民の安心・安全を守るため、家庭ごみの拠点回収制度の充実を通じて、水銀を含有する蛍光管、水銀体温計、水銀血圧計の分別回収等に先駆的に取り組んできた。しかしながら、多くの地方自治体が水銀を含有する家庭ごみのすべてを回収することは困難であり、水銀の適正な処理を確保するためには、製造・販売事業者も協力して回収する仕組みが不可欠である。

よって、国におかれては、「水銀に関する水俣条約」の早期発効に向け、国際的な働き掛けを強化するとともに、法整備をはじめとした、水銀含有廃棄物の適正処理を確保するための実効性の高い枠組みを早期に確立することを求める。

 

これにつづき京都府議会ほか8つの府内自治体議会で同趣旨の「意見書」が採択されました。

4 「水銀に関する水俣条約」の発効にもとづく新ルールの整備

「水銀に関する水俣条約」は2017年8月16日に発効しました。「条約」に対応する国内対策については、2015年6月、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が成立したのをふまえ、関係する政省令が順次施行されていきました。

日本においては、水銀の採掘はすでに中止され、水銀使用製品を新たに開発することも特別な事情がない限り考えられないことから、水銀使用廃製品を新ルールにしたがい適正処理することが主たる課題になりました。

 

<家庭から排出される水銀使用廃製品に「分別回収ガイドライン」>

 家庭から排出される水銀使用廃製品の適正処理のためには「家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」がまとめられました。

この「ガイドライン」は「市町村等の一般廃棄物を処理する者を対象として、水銀使用製品が一般廃棄物として排出される際の取り扱いに関する留意点をとりまとめたもの」とされました。

 「ガイドライン」の対象となる水銀使用廃製品としては、蛍光管、ボタン電池(補聴器、腕時計、ゲーム機等に使用)、水銀体温計、水銀温度計、水銀血圧計があげられてました。

 水銀使用廃製品の回収方法としては、家庭からの排出時に破損しないように留意するとともに、他の廃棄物とは分別排出することが求められました。具体的には、ステーション回収、拠点回収、依頼拠点回収、移動拠点回収などの方法によるものとされました。

また、運搬段階で、水銀使用廃製品が破損し、水銀が飛散・流出しないように留意すること、他の廃棄物と区分して運搬することが求められました。 

処理段階においては「焼却処理の禁止」が方向づけられました。また、大量に処理する場合には水銀回収処理が望ましいとされました。

各市町村では、このガイドラインのもとで、水銀使用廃製品の分別回収方法等の検討がすすめられました。

また、水銀使用製品の分別排出に資するため、「水銀使用製品の適正分別・排出のための表示等情報提供に関するガイドライン」も示されました。

 

<産業廃棄物の取扱いは「水銀廃棄物ガイドライン」で>

 水銀を含有する産業廃棄物の取扱いについては、廃棄物処理法の見直し、「水銀廃棄物ガイドライン」の策定によりルール化されました。

「廃水銀等」については「特別管理産業廃棄物」に指定され、適用対象になる施設も特定されました。

それ以外の事業所から排出される蛍光管等の水銀使用廃製品については「水銀使用製品産業廃棄物」として水銀の適正処理を行うことができる事業者に処理委託をするとともにマニフェスト管理をすることが求められました。

 

「水銀に関する水俣条約」にともなう国内対策が具体化されていくなかで、蛍光管リサイクル協会は、事業所・オフィス等から排出される蛍光管の共同排出・回収の事業の現場に即した普及啓発に取り組んでいきました。

 2017年10月、蛍光管リサイクル協会は、「水銀使用製品産業廃棄物」についての新たな対応について見解をまとめ、「蛍光管は新ルールで適正処理を」とよびかけました。

2018年、蛍光管リサイクル協会は「水銀使用製品の確実な回収・適正処理のために」というプログラムで京都市ごみ減量推進会議の助成金をうけ、これらの内容をパンフ、チラシ、ホームページなどで広くよびかけていくことになりました。また、これまでコンシューマーズ京都の主催行事として実施されてきた「蛍光管フォーラム」についても、この助成事業の関連行事の位置づけのもと、蛍光管リサイクル協会主催の行事として企画実施されました。

2019年1月、蛍光管リサイクル協会の事務所が、新たに発足した京都循環経済研究所に置かれることになりました。

 

5 LEDのリサイクルの可能性を探る

 2019年、蛍光管リサイクル協会は、京都市ごみ減量推進会議助成事業として調査研究「LEDのリサイクルの可能性を探る」にとりくみました。

調査研究の手法としては、先行研究の調査をふまえ、関係者のヒアリング、現場見学、LED手分解実証事業にとりくみ、調査結果を報告する「LEDフォーラム」を開催し、関係者と意見交換を深めることとしました。

 調査研究の結果、次のような成果と課題を確認することができました。

(1)LEDのリサクルは技術的には可能であるが、課題は多い

今回の調査研究によって、LEDのリサクルは手分解であれ、機械破砕であれ、技術的には可能であることがわかりましたが、他方で、事業として成立させるためには課題が多いことも確認されました。なかでもいかに効率よく回収し、リサイクル事業者のところに集めることができるか、そのためのコストに見合う「売却益」がえられるかという問題はなかなかむつかしい問題です。現実的にはリサイクルコストをだれがどこで負担するのかという問題に直面することになりそうです。

(2)自治体にとっては財政負担になるのが現実。拡大生産者責任の議論ができるか。

家庭から排出されるLEDについては当分まとまって排出されるわけではありませんので、時間をかけて問題の解決に当たればよいのですが、いまのままであれば自治体がリサイクルに関わるコストを負担せざるをえないことになります。今回、メーカーからの意見が集約できませんでしたが、拡大生産者責任についての議論がさけられないのではないかと思われます。

(3)産業廃棄物としての回収・処理システムの確立はいそぐ必要がある

事業所から排出されるLEDについては「産業廃棄物」として回収・処理するためのシステム作りを急ぐ必要があります。LEDは蛍光管のように水銀がふくまれないから他の産業廃棄物と同様の処理でよいとするのか、やはり独自にリサイクルシステムをつくるべきなのか、関係者のなかでの検討を深める必要がありますが、家庭からのLEDに比べ同じものが大量に出てくる条件を活かしたリサイクルの可能性を探ることが課題になります。

この調査研究以後も照明器具の主役はLEDに移行しており、近い将来LEDが大量に廃棄物として排出されることが予想されます。それに向けての回収・処理方法の検討が必要です。

 

6 あらためて電池について考える

 2020年、蛍光管リサイクル協会は、京都市ごみ減量推進会議助成事業として調査研究「あらためて電池について考える」に取組みました。

この調査研究では、

(1)「電池と水銀」について歴史的な経緯を確認するとともに、乾電池の排出・処理(再資源化をふくむ)の実態・課題を確認し、こんごにむけて必要な対策を検討すること

(2)「電池由来の発火事故」についてその実態をあきらかにし、メーカー段階での対策、廃棄物として排出・処理される段階での対策を検討すること

を課題としていました。

 しかし、新型コロナ感染拡大により企業訪問・見学調査が困難になるなかで、調査研究としては基礎的な文献調査・情報整理が中心になりましたが、水銀対策としての乾電池処理のこれからという論点とともに、リチウムイオン電池などに由来する発火事故対策が緊急の課題になっていることがわかってきました。

11月20日に開催した公開研究会では、集約されてきた情報を共有するとともに、リチウムイオン電池などに由来する発火事故の現状について問題点の交流を行いました。

 2021年度も新型コロナ感染拡大のもと、調査研究を継続することができず、具体的な提言、行動提案に至ることが出来なかったのは残念でした。

 しかし、この間、金属資源のリサイクルの必要性が強調され、また、ひきつづきリチウムイオン電池などに由来する発火事故の問題点が指摘されており、この点での調査研究・提言が課題になっているといえます。

 

7 新システムの模索から解散へ

設立10年をむかえ、蛍光管リサイクル協会にはどのような活動が求められるのか、蛍光管リサイクル協会自身の運営はどうあるべきなのかについての検討を行うことになりました。

蛍光管リサイクル協会ならではの蛍光管の共同排出(共同回収)の仕組みは、事業者、とりわけ中小事業者のみなさんにとって便利な仕組みとしてうけとめられ、会員事業者も少しずつ増え、回収量も増加してきました。

しかし、近年、予想されたことですが、照明器具市場の主役が蛍光管からLEDに変わっていくなかで、会員事業者のなかでも「LEDに交換したので、もう蛍光管が排出されません」という声が聞かれるようになりました。実際に、共同排出(共同回収)の日に「今回はお休み」といわれる事業者、「もう退会します」と言われる事業者が出るようになってきました。

他方で、事業設計時には問題にしてこなかった事務所経費負担、事務局体制などの問題についても検討しなければならなくなりました。

こうした諸事情について検討するなかで、蛍光管リサイクル協会は、2021年度総会の確認にもとづき、蛍光管リサイクル協会がコアになった現行システムをリセットし、実際に蛍光管の回収にあたってきた旭興産業をコアとした新しいシステムを準備することになりました。

この取組みの進捗状況をふまえ、蛍光管リサイクル協会は、2022年5月10日の総会で「解散」を決議し、現在解散手続き中です。

総会直後、京都法務局に「解散登記」を行いました。ひきつづき、6月1日の官報で「解散公告」手続きをとりました。「解散公告」から3ケ月が経過しましたが、特別の申し出はありませんでしたので、このまま清算手続きを進めていくことになります。

蛍光管の適正処理のための回収業務については、従来からお世話になってきた旭興産業株式会社に業務をひきつぎ、8月2日、3日に今年度の回収を行ってもらいました。

 残された課題は、蛍光管リサイクル協会のこれまでの活動記録を整理し、保存することです。

今回、紹介した「蛍光管リサイクル協会のあゆみ」をふくめた活動記録を、近く編集・発行します。

 

 最終的には、年が変わってからになりますが、「清算事務終了登記」を行い、事務所を閉鎖することになります。