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ブックガイド 桑嶋幹ほか著『プラスチックの仕組みとはたらき(第4版)』

ブックガイド 桑嶋幹ほか著『プラスチックの仕組みとはたらき(第4版)』

プラスチック問題は、プラスチックが暮らしの隅々に浸透しているだけに、その問題解決はなかなか容易ではない。

たとえば、ごみ問題に着目するのか、環境汚染に着目するのか、それによって問題の立て方も変わってくる。また、ある程度は専門的な化学知識が必要とされる。したがって、ややまとまったテキストで総合的に学習し、必要な情報を身につけることが求められるだろう。

本書は、そういう点からみてプラスチック問題を考える際、座右に置きたいものである。

本書は2005年に第1版が出て以来、多くの読者を得、2011年に第2版、2019年に第3版がだされてきたものである。今回の第4版は、第3版からすると間がないのだが、プラスチック問題が大きく変わる中で必要な最新情報の追加が求められたものと思われる。

本書の構成は、「はじめに」で次のように紹介されている。

「本書の構成は、まず第1章でプラスチックのことを知り、第2章でプラスチックの構造や作り方を学んだうえで、第3章と第4章でプラスチックがどのような場で活躍しているのかを学べるようにしました。第5章では、目的や用途からどのような新しいプラスチックが作り出されているのかを説明し、第6章では、プラスチックが抱える課題について触れました。興味のある章から読んでいただいても、楽しく読めるようにまとめたつもりです。」

この間のプラスチック問題の進展についてとりあえず学ぶのであれば、第6章から読み始めればよいのだろう。その際、なかなかそのような読み方は出来ないが、第3版と比べてどこが追加されたのかをチェックするという読み方もひとつなのではないか。今回、たまたまそのような読み方をすることになり、ためになる情報をいくつも見つけることができた。

まず、2020年7月から全国的にレジ袋有料化が実施されたが、その効果はどのようにみたらよいかということはとても気になっていたことだが、本書では「レジ袋辞退率は約80%となり、2021年の国内流通量は約10万トンで2019年の約20万トンから50%減となりました」としている。他方で、「レジ袋がなくなるとゴミ袋用の同等品の販売数が増えるので、有料化だけで解決できるものではない」との指摘も紹介している。(262p)このあたりの評価がなかなかむつかしい問題だと思っている。

プラスチックと地球温暖化の関係も気になっていることであったが、本書では「プラスチックの製造工程で・・ナフサから石油化学基礎製品を作る段階で3100万トン」「プラスチックの廃棄やリサイクルにおける焼却処理で・・1600万トン」「合わせた2019年の二酸化炭素発生量は4700万トン、つまり全体の4.2%をプラスチック由来と見積もることができます」としている。(272p)これを多いとみるか少ないとみるか。

いうまでもなく、この間の情勢の変化の最大の問題は、プラスチック資源循環促進法が施行されたことである。この点は簡単な解説にとどまっており、別の情報源にあたらなければならない。SDGsに関わる部分も同様である。

PETボトルのリサイクル関連の記述や、プラスチックと「環境ホルモン」の関連の記述は大きな変更はないようだが、再確認するべき情報としてマークしたい。

「科学と技術でプラスチックの課題を解決することができるか」との問いも第3版と同じだが、大事な問いかけだと思う。

 

(秀和システム刊、2022年9月)