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GX基本方針の決定について

GX基本方針の決定について

 

12月22日、第5回目のGX実行会議が開催され、これまでの討議をとりまとめた「GX(グリーン・トランス・フォーメーション)実現に向けた基本方針」が決定されました。

 

その内容は、福島原発事故の経験や教訓はどこへいってしまったのかと言わねばならないようなもので、「エネルギー危機」を強調し、「脱炭素」の名のもとに、原発の「再稼働推進」、「次世代革新炉の新規建設」、60年を超す「運転期間」の延長など、原発政策を大転換するものです。

 

このような原発政策の大転換については、その内容とともに、限られたメンバーの、限られた議論だけで決めてしまった政策決定のプロセスについても多くの批判の声があがっていますが、あまりにも当然のことです。

 

私たちは、現在、進行する「気候変動」について、「パリ協定」、それに続く「グラスゴー気候合意」をふまえ、地球の気温上昇を「1.5℃」までに抑えることを目標に、CO2の排出量を抑えるために、「省エネ」を徹底しながら、「脱石炭・脱原発」「再生可能エネルギーの普及拡大」へむかうエネルギーシフトをすすめるべきだと主張してきました。今回の「基本方針」は、このような主張とは全く違った方向をしめすもので、とても受け入れることはできません。

 

原発については、福島原発事故の収束ができたとはとてもいえない状況にあり、また、廃炉技術や使用済み核燃料の処理の見通しもたっていません。老朽原発の再稼働についての危険性についても心配されています。今回の「基本方針」は、新たな「原発安全神話」を生み出し、将来にわたって国民に「原発のリスク」をおしつけるものです。

 

政府は、「基本方針」をうけて、関連法案の準備、新年度当初予算への関連予算の計上など、「基本方針」の実行にむけて動き出していますが、あまりにも乱暴な政策転換を認めるわけにはいきません。「基本方針」は白紙にもどし、時間をかけた国民的な討議、徹底した国会審議を通じて求められるエネルギー政策を構築することが必要なのではないでしょうか。

 

2022年12月23日

 

京都循環経済研究所所長 原  強