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京都循環経済研究所 設立から4年

京都循環経済研究所 設立から4年

 

京都循環経済研究所は、2018年10月16日に設立されました。実際の活動は2019年1月からであるとして、これで4年余が経過したことになります。

この機会に、これまでの活動をふりかえり、これからの課題を整理することにします。

 

1 何をめざしてきたのか

 

 京都循環経済研究所は、その設立にあたって、基本的な組織理念をまとめた「趣意書」を作成しています。実際に何ができるかわからない組織ではありましたが、「循環経済」という理念を軸に調査研究、情報発信を行うことをめざしました。

 実際に、どのような調査研究や情報発信をすすめるのかということを整理するために、「私の「循環経済論」――京都循環経済研究所の課題」と題するレポートをまとめ、創刊されたニュース「循環経済」紙面(1号―5号)に掲載しました。このレポートでのべている「リサイクルだけではごみは減らない」「リサイクルにはコストがかかる」「有害廃棄物の適正処理のシステム作りが独自の課題」「日本でも拡大生産者責任の考え方を定着させる必要がある」などの課題意識は基本的に現在もそのまま生きていると思います。

 京都循環経済研究所の情報発信については、

 1 ニュース「循環経済」の継続発行

  ・手配りを基本に「10日に1回」の発行をめざす

  ・ひとつの目標として100号まで発行を継続する

 2 ホームページの活用

を基本とすることにしました。

 会員組織づくりについては、とりあえず応援いただける個人の方にお願いすることから開始しました。

 事務所については、蛍光管リサイクル協会、レイチェル・カーソン日本協会関西フォーラムとの共同事務所とすることを前提に、京都循環経済研究所が窓口になり、ヒロセビルと「3、4年をめどに」契約することになりました。

 

2 何が出来たのか

 

京都循環経済研究所の設立(2018年10月)から4年余、この間、「まったなし」の気候危機のなかで「2050年カーボンニュートラル」をめざす取組みや、レジ袋有料化などプラスチック資源循環への取組み、SDGs(持続可能な開発目標)やエシカル消費をめざす取組みなどが注目されるようになりました。

 また、京都のまち・経済は、インバウンド(外来者ラッシュ)の効果により「バブル」化するなかで、本来、京都のまち・経済はどうあるべきかという議論が必要とされていたはずなのですが、新型コロナ感染症の拡大にともない状況は一変し、観光・宿泊関連業、飲食業をはじめ、京都経済は大打撃をうけました。

コロナ感染症の拡大は、大学をはじめ教育分野でも大きな影響がでました。 

緊急避難的にはじまった「オンライン」によるコミュニケーションは、いまではすっかり定着し、「ポスト・コロナ社会」でも「オンライン」が「対面型コミュニケーション」と併存することが見込まれています。

このような状況のもと、「循環経済」をテーマにした調査研究は、課題は広がりを見せながらも、実際には身動きが取れなくなり、文献調査・情報収集型のものになってしまったのが現実でした。

 

<調査研究>

まず、調査研究についてです。

最初に、蛍光管リサイクル協会として行った調査研究を紹介します。

以下の2つの調査研究は、京都市ごみ減量推進会議の助成を受けて実施されたものです。

1 LEDのリサイクルの可能性を探る(2019年度)

2 あらためて電池について考える(2020年度)

調査研究の経過と結果についてはそれぞれ「事業報告書」を提出しています。また、「循環経済」紙面や蛍光管リサイクル協会のホームページで順次、情報を掲載してきました。

それぞれのテーマで「フォーラム」を開催するなど、情報共有に努めてきました。

電池については啓発用のパンフレット「あらためて電池について考えよう」を編集・発行しました。

電池についての調査研究については、2021年度もリチウムイオン電池由来の発火事故のテーマで継続する必要があったのですが、コロナ対策との関係で、実施を見合わせることになりました。   

社会実験型の調査研究にはなりませんでしたが、以下のようなテーマでの文献調査・情報収集型の調査研究を継続的に実施してきました。

・気候変動対策とエネルギーシフト

・プラスチック問題

・SDGsを考える

・私の「現代環境論」(立命館大学講義「現代環境論」テキスト作成・補強と連動するものでした)

これらの調査研究の内容は「循環経済」の連載記事としてまとめられ、その後、研究所のホームページのコンテンツとして掲載されてきました。

また、これらの調査研究とも関連して、必要と思われる書籍情報を「循環経済」の<ブックガイド>記事として提供してきました。

 

<情報提供>

次に情報提供についてです。

京都循環経済研究所のニュース「循環経済」を「手配り新聞」として10日に1回の発行を継続してきました。ひとつの目標としてきた100号を達成し、さらにこのほど150号の発行を実現することが出来ました。

また、2022年11月には、これまでの調査研究の成果を整理するため、「循環経済」の特別号「気候変動とエネルギーシフト」「プラスチック問題を考える」「ブックガイド特集」を編集・発行しました。

「循環経済」は、京都循環経済研究所の情報提供のためのツールとして有効な働きをしてきたといえます。

ホームページの活用については、京都循環経済研究所のホームページに必要な情報を保存することにしてきました。また、蛍光管リサイクル協会のホームページとのリンクについても心がけてきました。

 

<会員組織>

規約上は団体・個人の会員組織を想定していましたが、実際にはご支援いただく個人の方から「賛助会費」をいただくという範囲にとどまりました。

 

<事務所運営>

事務所については、蛍光管リサイクル協会とレイチェル・カーソン日本協会関西フォーラムの共同事務所として運営されてきました。

しかし、蛍光管リサイクル協会が、2022年5月、解散を決議し、2023年2月1日は清算業務を結了し、その活動が終了しました。このため、これまでのヒロセビルの事務所を維持することが出来なくなり、2022年度末をもって退去することになりました。

2023年度以降は新しい事務所のもとで新しい活動スタイルをめざすことになります。

 

<年報の発行>

研究所の調査研究についてはニュース「循環経済」に順次掲載し、再整理したものを「年報」に収録してきました。「年報」はこれまでに3回発行してきました。今回が4回目になります。

これまでに発行した年報の目次を紹介します。

 

「年報2020」 2020年4月

●京都循環経済研究所趣意書

●私の「循環経済論」 京都循環経済研究所の課題

●「持続可能な開発」と循環経済

●「蛍光管の適正処理」への道

●「くらしの中の化学物質」をテーマに

●「環境ホルモン」問題、その後            

●京都循環経済研究所 2020年度の課題

 

「年報2021」 2021年5月

●私の「現代環境論」    

●公開研究会「あらためて電池について考える」主催者報告

●「3・11」から10年

●SDGsを考える

●環境政策の課題

●京都循環経済研究所趣意書

 

「年報2022」 2022年4月

●京都循環経済研究所 2022年度の課題

●京都循環経済研究所 設立から3年

●カーボンニュートラル実現への課題

●気候変動対策とエネルギーシフト

●あらためてプラスチック問題を考える

●永遠の化学物質・PFAS

●ISO26000とSDGs

●『人新世の「資本論」』を読む

●斎藤幸平著『大洪水の前に』を読む

●小林秀雄の「DDT」

 

●「循環経済」記事索引