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プラスチック条約を 実効あるものにするために

プラスチックによる海洋汚染対策のために法的拘束力のある国際文書(条約)づくりにむけての動きが始まりました。

伝えられるところでは、最終的に条約採択を行う会合は2025年に予定されているとのことです。また、政府は、この会合を日本で開催するために調整をはじめたとのことです。

プラスチック問題の重要さを考えるとき、このような条約づくりの動きがはじまったことは歓迎したいと思いますが、同時に、問題解決のために、真に有効な条約になることを願わずにはいられません。

私の経験としては、これまでに「地球温暖化防止京都議定書」(1997採択)や「水銀に関する水俣条約」(2013採択)などについて、その採択の前後、市民の立場から情報収集や要望・提言の発表など、できることに取り組んできました。

今回のプラスチック条約を実効あるものにするために、「水銀委関する水俣条約」をめぐっての経験を紹介させてもらいます。

 

1 情報収集・共有のために

私たちが、水銀規制のための国際条約づくりについて情報を入手したのは、蛍光管リサイクル協会を組織して、事業所から排出される蛍光管の共同排出・共同回収の取組みを開始したころです。

何度も書いてきたことですが、当時、廃棄物になる蛍光管の処理についての基本になる考え方は、廃棄物処理法の下で排出者の責任で処理するというものでした。これに対して、「水銀の適正処理」を行うという視点から、メーカーにも応分の負担をしてもらい、蛍光管の適正処理システムを作ることができないかという考え方をもち、そのための特別立法のようなことができないかという思いがありました。

こういうなかで、水銀規制のための国際条約づくりがはじまるということを聞き、その情報収集・共有のための取組みを始めました。

具体的には、条約交渉の枠組みができ、条約原案が公表され、政府間交渉を通じて最終文書化され、採択に至る過程において、その時点で公表されている情

<写真は「蛍光管フォーラムin東京 2012年10月>

報を関係者にお話してもらうセミナーを連続開催しました。講師・報告者には環境省、経産省の担当者、学識者などをお願いしました。

当時、水銀規制のための国際条約について情報提供するセミナー等は限られており、貴重な情報提供の場になっていたのではないかと思います。

 

2 要望・提言活動、とくに、国内対策について

 このような活動のなかで得られた情報をもとに、私たちの要望・提言をまとめ、反映されるように動きました。

 とくに、これも全国的には珍しいものだったと思いますが、京都府内の自治体に対して、蛍光管リサイクル協会の活動がかかえる問題をふまえ、国内対策の具体化を求める陳情活動を行ないました。

この動きは、関連自治体の担当部局、議会関係者に影響力を発揮しました。結果として、京都府議会、京都市会など10の地方議会からの意見書になりました。

 このようなことを背景に、国内対策関連法の国会審議にあたっても、国会傍聴・要請活動をすすめました。参議院環境委員会での審議にあたって、参考人として意見表明を行うチャンスが与えられたのはとくに大きな成果でした。

 国内対策関連法が成立した段階では、蛍光管の適正処理にむけて、何がどのように変わるのかについて、蛍光管リサイクル協会関係者のみならず、広く情報提供する活動に力をいれました。

 

 以上のようなことは京都循環経済研究所、蛍光管リサイクル協会のホームページで何度か紹介しているので、見直していただければと思います。

 

 いずれにしても、プラスチック条約づくりの動きがはじまったいま、関連国内対策の具体化・施行まで7-8年程度は必要とされるでしょう。

 したがって、「情報収集・共有」の段階から「要望・提言」、「国内対策への対応」まで、少し先を見て、息の長い、計画的な取組みをすすめる必要があるといえます。

 

 プラスチック条約交渉は、以下の予定ですすめられるとのことです。

 第3回政府間交渉委員会  2023年11月 ケニア・ナイロビ <条約原案検討>

 第4回政府間交渉委員会  2024年4月  カナダ・オタワ

 第5回政府間交渉委員会  2024年10月または11月 韓国(場所未定)

条約採択を行う会合    2025年に予定(場所未定)

 

関連する団体・個人が声をかけあい、実効あるプラスチック条約が実現するように取組みをすすめていきたいと思っています。