食品安全委員会は、この間、PFASの食品健康影響評価についてワーキンググループを設置し、検討してきましたが、6月25日に「評価書」を確認し、総理大臣ほか関係大臣あてに通知し、すみやかな対応を行うように求めました。以下に「評価書」の「概要」部分を紹介します。
食品安全委員会において、自らの判断で行う食品健康影響評価として、PFASの食品健康影響評価を行った。
本評価においては、食品健康影響評価を速やかに実施するため、国際機関、各国政 府機関等における PFASの評価に用いられた科学的知見及び評価結果を整理・精査し、調査事業により収集したPFASのうちPFOS、PFOA及びPFHxSに関する文献 及びその他の関連する重要な文献を用いた。
健康影響の評価として取り上げるエンドポイントについては、海外評価機関による評価書で検討されたエンドポイント別に整理した。その結果、PFOS 及び PFOA について、疫学研究で報告された血清ALT値の増加、血清総コレステロール値の増加、 出生時体重の低下、ワクチン接種後の抗体応答の低下との関連は否定できないと評価した。ただし、血清ALT値の増加及び血清総コレステロール値の増加については、増加の程度が軽微であること、のちに疾患に結びつくか否かが不明であり臨床的な意義が不明であること、用量反応関係が示されていないこと等、ワクチン接種後の抗体 応答の低下については、証拠の質や十分さに課題があることから、健康影響のための エンドポイントとして採用するためにはいずれも証拠は不十分であると判断した。また、出生時体重の低下については、SGA児、低出生体重児(2,500 g未満)等の影響 を報告した研究は限られており、出生後の成長に及ぼす影響についてはまだ不明であると判断した。
発がん性については、動物試験でみられた事象は、げっ歯類特有のメカニズムである可能性がある又は機序の詳細は不明であることから、ヒトに当てはめられるかどうかは判断できないと評価した。疫学研究から、PFOAと腎臓がん、精巣がん、乳がん との関連については、研究調査結果に一貫性がなく、証拠は限定的であると判断した。 PFOS と乳がん、PFHxS と腎臓がん及び乳がんとの関連については、証拠は不十分 であると判断した。
現時点の科学的知見に基づいて食品健康影響の指標値を検討した。
エンドポイントについては、PFOSについては、ラット2世代生殖・発生毒性試験 (Luebker et al. 2005a)でみられた児動物における体重増加抑制を、PFOAについ ては、マウス生殖・発生毒性試験(Lau et al. 2006)でみられた胎児の前肢及び後肢 の近位指節骨の骨化部位数の減少、雄の児動物の性成熟促進をそれぞれ採用した。また、血中濃度から摂取量への換算には、海外評価機関で採用された用量推計モデルで の計算結果をそのまま適用した。
以上のことから、食品健康影響の指標値は、耐容一日摂取量(TDI)としてPFOS 8 は20 ng/kg 体重/日(2×10-5 mg/kg 体重/日)、PFOA は20 ng/kg 体重/日(2×10-5 mg/kg 体重/日)と設定することが妥当と判断した。PFHxSについては、評価を行う 十分な知見は得られていないことから、現時点では指標値の算出は困難であると判断した。
ただし、将来的に、今回の検討時には不十分であったPFASの健康影響に関する研究・調査結果の一貫性、影響の度合いの臨床的意義、用量反応関係等に関する情報等の科学的知見が集積してくれば、TDIを見直す根拠となる可能性はある。
国内でのPFOS及びPFOAの摂取量については、平成24~26(2012~2014)年度に限られた地域数で調査されたトータルダイエットスタディによる情報によると、 一日あたりの平均摂取量は、PFOS(LB~UB)が0.60~1.1 ng/kg 体重/日、PFOA (LB~UB)が0.066~0.75 ng/kg体重/日と推定されている。推定された一日あたり 平均摂取量は、現時点の科学的知見に基づいて設定したTDI(PFOS:20 ng/kg体重 /日、PFOA:20 ng/kg 体重/日)と比較すると低い状況にあるものと考えられる。しかし、国内における各種食品中のPFAS濃度やその濃度分布に関するデータ等、摂取量の推定に関する情報は不足しているため、この推計値にはかなりの不確実性があることに留意が必要である。
※評価書全文は食品安全委員会のホームページで見ることが出来ます。