現在、第五次循環型社会形成推進基本計画の策定作業がすすめられています。計画(案)のなかで、「循環型社会」において「循環経済」がどのように位置づけられるのかが論じられています。この間の議論の経緯が要約されたもので、「循環経済」ということを考えるうえで便利な文書と言えます。その部分を紹介します。
1.1.2 循環型社会における循環経済の位置づけ
循環基本法において、循環型社会とは、製品等が廃棄物等となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった倍愛においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会とされている。循環型社会の形成の最大の目的は、環境基本法(平成5年法律第91号)第4条で規定する「環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会」の実現を推進することであるとされており、循環型社会は経済を判官する概念として整理されている。
また、2003年3月に策定された第一次循環基本計画では「循環型社会では、自然界から新たに採取する資源をできるだけ少なくし、長期間社会で使用することや既に社会で使用されたものなどを再資源として投入することにより、最終的に自然界へ廃棄されるものをできるだけ少なくすることを基本」としており、循環経済への移行によって目指すものは、第一次循環基本計画において循環型社会が基本とした姿であると言える。
2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」が策定され、この中で、循環基本法に規定する基本原則を踏まえ、より持続可能性が高まることを前提に再生不可能な資源への依存度を減らし再生可能な資源に置き換えるRenewableを含めた3R+Renewableの基本原則が掲げられた。その後、2021年10月に改訂された「地球温暖化対策計画」においては、地球温暖化対策の基本的考え方の一つとして3R+Renewableをはじめとする循環経済への移行を大胆に実行する旨が明記された。これを受けて、第四次循環基本計画の第2回目となる進捗点検結果を踏まえ、2050年カーボンニュートラルを宣言した後、我が国で初となる循環経済の方向性を示した循環経済工程表を2022年9月に取りまとめ、2050年を見据えた目指すべき循環経済の方向性と素材や製品など分野ごとの2030年に向けた施策の方向性が示された。
国際的な議論では、循環経済は、資源(再生可能な資源を含む。)や製品の価値を維持、回復又は付加することで、それらを循環的に利用する経済システムであるとされている。この経済システムでは、例えば、環境配慮設計や修理等により製品等の長寿命化、再利用、リサイクル等が促進され、資源が可能な限り効率的かつ循環的に利用され、天然資源利用や廃棄物が減少する。その結果として、資源の採掘、運搬、加工から製品の製造、廃棄、リサイクルに至るライフサイクル全体での環境負荷低減や、世界的な資源受容の増加への対策にもつながる。
循環経済への移行は、循環型社会を形成する上での強力なドライビングフォースであり、資源消費を最小化し廃棄物の発生抑制や環境負荷の低減等を実現する有効な手段でもある。言い換えれば、この循環経済への移行に関する取組は、3Rの取組を経済的視点から見て、資源循環を価値の源泉として捉え、バリューチェーンを含む経済活動全体を循環的に転換させていくものであって、循環型社会を形成する方策の一つであると言える。