12月17日、経済産業省は総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会を開催し、「エネルギー基本計画」の原案を公表しました。
焦点となっていた2040年度の電源構成の見通し(目標)は、再生可能エネルギー4~5割、火力3~4割、原子力2割程度となっています。
2023年度の速報値(再生可能エネルギー22.9%、火力68.6%、原子力8.5%)に比べると、再生可能エネルギーの構成比を高め、火力の構成比を下げていますが、原子力は現行計画の水準を維持したものといいながら、原発の実際の運転利用状況からすると、原発の利用・活用を推進する目標を掲げることになります。
また、注目すべきなのは、「東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み」の部分で、これまで掲げられていた「原発依存度を可能な限り低減する」との文言を削除したことです。
福島の経験、反省、教訓を肝に銘じて取り組むというのであれば、このようなことは認められるものではありません。
このような「基本計画」案がまとめられてきた背景には、岸田内閣のもとで策定されたGX(グリーントランスフォーメイション)政策があります。この政策のもと、今後の技術開発や投資の流れが方向づけられており、「エネルギー危機」「脱炭素」の名のもとに「原発再稼働推進」「次世代革新炉の新規増設」「運転期間の延長」など、原発政策についても大転換が行われてきました。今回の「基本計画」は、この流れを実行計画化しようというものです。
いま必要な「基本計画」は、1.気候変動対策としてエネルギー政について脱炭素化を徹底していくこと、2.そのために再生可能エネルギーの利用拡大を飛躍的にすすめること、3.石炭火力発電については年限を切って撤退すること、4.原発については地震大国・日本ではあまりにもリスクは大きく、また、放射性廃棄物の処理見通しもないなか、「脱原発」にむかうこと、を骨格にしたものでなければなりません。
このような点からすると、今回の「基本計画」案はまったく評価できません。
また、「基本計画」はパブリックコメントの手続きを経て閣議決定されることになっていますが、このような重要な事項の決定手続きとしてはまったく不十分です。特定の「有識者」だけの会合閣議決定だけで決めるのではなく、公聴会の開催や、国会の審議・承認など、国民の声を十分に集約・反映する方式を採用すべきです。